Lost
「うぐっ…」
匂いのきつい、大量の精液が口腔に注ぎ込まれ、模木はびくびくと痙攣した。
「まだ何も話す気にならないのか?ミスター模木」
床に膝を立てて座らされ、椅子に座る男の股間に顔を押しつけられながら目線を上げると、プラチナブロンドの逞しい男がスラックスの前から猛る剣だけを出して自分を見下ろしている。口腔にねじ込まれたそれは、熱の治まる様子もなく脈動し、今再び模木の喉を犯すべく尖り始めている。
流石に女性が同じようにされるよりは恐怖を感じてはいないだろうが、それでもこの異常な状況は、屈強な心身を持つ模木を確実に追い詰めつつあった。
これがニアのやり方なのか。こんな卑劣なやり方が。
いくらキラを捕まえるために必死になっているとはいえ、こんな拷問は酷すぎはしないか。竜崎のやり方も多少は強引だったが、ここまで人間の誇りを踏みにじるものではなかったはずだ。童顔の、色の白い天使のような少年の顔を思い浮かべ、模木は怒りよりも悲しさで胸を締めつけられながらむなしく目を瞬いた。
一部を除けば着衣に乱れがない相手に対し、シャツが引き裂かれ肌の露出した肩や胸元に、ボクサーブリーフと靴下のみに剥かれた下半身の模木は、どう気を強くもっても劣位を感じざるをえない。こんな状況を一切予測していなかった模木の心理的ダメージは大きく、本気になればある程度対抗できるはずの相手に対して、何の抗いをすることも出来なかった。
男からの暴力など、外国人顔負けの体格を誇る模木には何でもない。しかし、性的な意味を含んだ暴力に対しては、彼は体験的に全くの無知であった。何よりも彼を苦しめるのは、自分が今、理不尽に汚されていること自体よりも、この状況からの逃避を願って目を閉じるたびに浮かぶ顔―――――――。
(相沢さん…)
どんな拷問にも耐え抜く自信はあった。けれども彼への想いを踏みにじられることだけは耐え難かった。見上げるとレスターは再び恍惚の表情を浮かべている。膨張していく口内のものに噛みついてやるほどの気性の激しさも分別のなさもないまま、その塊を必死で舌で押し返そうとしながら、模木は目じりに溜まっていく涙をこらえることが出来なかった。
誰も知らない、胸の奥にしまってきた相沢への想い。夢の中で彼に抱かれながら自慰に耽ったこともある。その後決まって自己嫌悪に陥りながら…。
早く終わって欲しい。
これが、自分にキラとLの情報を吐くように仕向ける拷問であるなら、ある程度の時間が経てば開放されるはずだから…。
「んッ…ぐう」
濃い陰毛に鼻先を擦り付けるように押さえ込まれて咽喉に突き立てられるもの。腰を揺らめかせながら模木の頭を押さえつけるレスターの手に力がこもるのがわかる。やがて毛足の短いうなじ付近に嫌というほど爪を立てられたかと思うと、3度目の射精が模木の顔面を汚した。
涙を流す模木を、レスターは切ないような目で眺めた。涙で潤んだ視界を大きな手が迫ってくる。一瞬身体を強張らせた模木の頬を優しく撫でたその手は、やがて厚い肩をたどって戸惑いがちに離れた。
涙と白濁をぬぐって視界が晴れると、そこには同じ目線に跪いたレスターの顔があった。眉を寄せ、じっと自分の目を見る彼の表情に、拷問や尋問以外のニュアンスを感じながらも、模木は顔を横向けようとした。と、同時にレスターの唇が模木のそれに重ねられた。申し訳なさげに開かれたレスターの薄い唇が、模木の前でぱくぱくと動く。
「Mr.模木。すまない。これは…ニアの」
わかっています、と答えようとした模木の耳をレスターの熱い息がかすめて、模木はレスターの逞しい腕に抱きしめられていた。
「ニアの…意向ではないんだ…」
次の瞬間、堰を切ったように激しい接吻を受けながら、模木は冷たい床に背を押しつけられ、そのまま何もわからなくなってしまった。
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