しがみつくように冷たい壁を抱いた。
 守宮のように無様に、犬のように従順に。
 何度も何度も額を打ちつけながら肩越しに振り返ると、獣欲の眼は静かに燃えている。

 早く終わらせて欲しい。
 いつまでも切っ先を突きつけられているのは、堪らない。それでなくても気分が悪い。嘔吐しそうだ。


 じわり。


 目の下の血流がよどみ、隈が浮き上がるのがわかった。
 獣の切っ先は止まらない。
 だらだらと伸びた髪の中で獣の眼は優しく笑い、そうしてひと言、呼ぶのだ。


 「L」


 違う、Lはあなただろう。
 出かかった言葉を噛み砕いて、「竜崎」は首を振った。

 名を呼んで欲しい。

 私をその手で救い上げたとき、あなたがつけてくれた、私の本当の名。

 あなたと同じ名を名乗るのだと知ったときはあれほど躍った心なのに、今はこんなにも息苦しい。


 じわり、

 じわり。


 目の下に隈が浮く。

 私の名を呼んで。

 必要なら、もういくらでも捧げるから。

 だから、私の名を呼んで。

 せめてそうすれば、この冷たすぎる肢体に血が通うのに。

腰を揺らめかせながら獣は哄笑する。
止まない抽出に、血がよどみ、隈が浮く。


じわり、

じわり、

じわり。


じわり、

じわり、

じわり。


じわり、


じわり、




ぽ た 。




律動に耐え、そうして頭を壁に擦りつけながら頬を滑り落ちた雫。

「泣いているのか?L」

未だ繋がったまま、獣は笑う。

部屋の扉は、無情にも二人を世界から隔てたまま。





冷たい壁にしがみつく名も無き花は、獣の肌との狭間で無残に押し潰され、

やがて、

声も無く落ちた。

 


















 

 

 

ブラウザを閉じてお戻りください